電力供給における過度な不安はいらない
「電力の安定供給への不安」は、長年にわたる技術革新やノウハウの蓄積の功績もあって、日本の停電回数は諸外国と比べて格段に少なく、電力を安定的に供給してきました。しかし、新電力が電力を安定的に供給できるかと不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
また、従来の電力会社は、国による審査や認可を受ける一方で電力の供給義務もありました。しかし、電力自由化後の2020年以降に供給義務が撤廃が検討されており、「電力の安定供給への不安」を訴える声が大きくなっています。
電力自由化により、発電設備の運営管理や保守などの技術力やノウハウが不十分な事業者が参入する可能性は否定できませんし、利益最優先の経営を進めることで、設備投資に十分なお金をかけなかったり、十分な余力がない発電設備で発電を行ったり、ということもありえます。そのため「大規模停電が増えるのでは」という声があるのも事実です。
こうした不安に対して、政府は安定供給のためのルールを作ることで対応しています。安定供給の肝となる送配電網には規制を残し、既存の電力会社の独占を認める代わりに安定供給の義務を課すのです。仮に新電力がトラブルなどで十分な電力を確保できなかった場合、既存の電力会社が不足分を補うことになっています。
同時同量というシステム
電気というものは、世の中にあるさまざまな他の商品とは異なり、「売り切れてしまったので今は販売することができません」とか「次の入荷を待っている状態です」ということが許されません。電力会社の供給の都合によってその度に停電するなんてことがあってしまっては絶対にならないのです。「同時同量」というのは、こうした売り切れという事態に陥らないためのシステムなのです。
同時同量とはどういったものなのか紹介したいと思います。一言で言うと、電気の需要と供給のバランスをいつでも等しく保って、その量を同じにさせることです。
電気は、作られたものをそのまま貯蓄しておくことが性質上難しいものです。需要が増えてきたときのために余分に作って貯めておくことができず、かと言って品切れ状態(停電)になってしまうことはあってはならないので、消費者がどれだけ電気を必要としているのか、その需要の大きさに合わせて供給量を同じように保っておく必要があります。そのために同時同量というシステムによって需要と供給のバランスを常にチェックしつつ、均衡を保っているのです。