・薄利多売の電力事業
実は電力事業は薄利多売という事実はご存知でしょうか、火力発電は作るのに莫大な時間とお金がかかります。
しかも作ってすぐ売れる訳ではなく試運転から3~4年程経過してようやく電気が出てくるレベルで、これから発電所を建てようとしているところは最低でも3年は設備投資がかかる試算となり、その間電気はできず売り上げも見込めず回収まで10年スパンの年月がかかります。
更に火力だけに燃料が高騰すれば利益が吹き飛びかねません。
・ノウハウを活かす企業と囲い込みを狙う企業
では既に発電所を保有しているところはどうでしょうか。製鉄会社や製紙会社は電気会社から電気を買うよりも自前の発電で自社の電力を賄ってきました。理由は事業で電力を大量に使うが、買うと高いから自分で作ろうというコストダウンの一環なのですね。こうした設備やノウハウがあるところは電力を小売りに出せば発電所の設備投資が可能になりコストダウンを狙えます。更に燃料調達量を増やす事で燃料単価当たりの価格を安く交渉できるメリットがあります。
では携帯電話事業やガス会社は何故参入するのでしょうか。
一人一台は必ず持っていると言われるまでに普及した携帯電話、その契約ユーザー数は膨大な物を有しておりサポートセンターや料金の支払い体制も整備されています。そう携帯電話会社は発電所は無いですが既にサービス形態としてインフラが整っている事が多いのです。
こうなると後はインフラを活用して電気を供給するだけで料金の回収も容易、本業のサービスと合わせて契約すればセットでお得な割引などの提供をすれば、その膨大なユーザー数を丸々自分の手に囲い込める訳です。
ガス会社も同様でこちらも契約数は膨大で、電気とガス同時契約割引や個別に電気とガスを契約する手間も省ける等大きなメリットとなります。
しかし疑問点はまだ残っています、冒頭で上げた薄利多売という問題です。各企業は何故薄利多売に参加するのでしょぅか。
実はこれまで上げた企業はライバルとの鎬を削ったり、不況で本業の売り上げが左右されやすい企業なのです。
携帯やガスは前者、製鉄、製紙は後者に該当します。どの企業も独占企業ではない為本業が元気なうちに売り上げを確保し、顧客を囲い込んでおきたい思惑がある為参入しているのです。企業側もいきなり黒字化は望んでいません、本業が傾いた際に支えてくれる道を模索しているのです。
電力事情