2011年3月の東北大震災を機に、「脱原発」という言葉を良く耳にするようになりました。
そして実際、日本は一時期、原子力ゼロの状態に。
でも、日本のエネルギー自給率はたった5%しかないことを知っていますか?
そんな中、なんと日本はエネルギー消費国第5位にランクイン…。
1位〜4位は順に、中国・アメリカ・ロシア・インドとなっていますが、これらの国のエネルギー自給率は低い国でも70%以上。
日本はエネルギー消費大国なのに、その95%を他国からの資源の輸入に頼っているという状況なのです。
では今、日本に必要とされるエネルギーって一体何なのでしょうか?
2016年4月からスタートする電力自由化に伴って、「エネルギーミックス」について考えてみましょう。
そもそもエネルギー自給率が低いと何が問題なの?
エネルギー自給率5%と聞くと、数値としての頼りなさは伝わりつつも、実際低いと何か問題があるの?と疑問に感じますよね。
現実に起きた問題で考えてみると、まず、日本は1970年代に2度もオイルショックを経験しています。
オイルショックというと、トイレットペーパーの買い占め現象の方が記憶に残っているかもしれませんが、それよりも、海外からの資源調達が困窮し、電力の使用に制限がかけられていた、ということの方が大きな問題でした。
当時、日本は高度成長期の真っ只中!
そんな中での電力制限は、戦後初めて日本経済がマイナス成長となる結果に…。
自国でエネルギーを確保できなかったばかりに、日本経済に影響を及ぼすほど、大きな打撃を受けてしまったのです。
しかも、なんと当時のエネルギー自給率は今よりも高い9%!
昔よりも今の方がもっと深刻な状況です。
資源小国の日本がこの先も、安定した社会・経済を続けるには、
他国に頼りきりの不安定なエネルギー供給状況ではなく、自国のエネルギー自給率を上げることがとても重要なのです。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーの大きな問題点
日本には資源がないといっても、
太陽光、風力、水力、地熱などの永続的に再生可能な「再エネ」があるじゃないか、と思いますよね。
確かに再エネは原子力と同じく、発電時にCO2の排出もなく、環境面から考えても優れた電源であり、ソーラーパネルなど、自宅に太陽光発電システムを取り入れる場合は国から補助金が出るなど、国としても推してきた電源でした。
ただし、再エネを普及させるには大きな問題が2つ…。
①お金がかかる!
2012年7月にスタートした「固定価格買取制度(FIT)」という制度があるのを知っていますか?
これは再エネを普及させるために、再エネを用いて発電された電気を、国が定める固定価格で電気事業者が買い取らなければないないという”義務”で、買い取った再エネ電気は私たちが普段使う電気として家庭に届けられています。
再エネが普及する素晴らしい制度である反面、電気事業者は再エネ電気の買い取りにお金がかかってしまいますよね?
ではそのお金はどうしているかというと…
なんと、私たちの電気代に上乗せされているのです!
いくら位上乗せされているかというと、
この制度が始まった当初は一家庭平均1,300円/年でしたが、再エネの導入が進み、今ではなんと約6,000円/年もの負担額に!
さらに、将来的にはまだまだ増えて2倍の12,000円/年にまでになると予測されています…。
ドイツも再エネに力を入れていますが、一家庭あたりの負担額は既に30,000円/年に達しようとしているため、さすがに制度の見直しを余儀なくされています。
日本でももちろん、制度の見直しが検討されていますが、問題が解決したわけではない状況下で、再エネに期待を持ちすぎることはできないのです。
②天候や時間帯などに影響される!
2つ目の問題点は、太陽光や風力は天候による影響を受けやすい発電方法ということです。
もちろんですが、技術だけでは天候をコントロールすることはできないですよね。
だからといって、「今日は晴れなかったし風もなかったから電気届けられません。」というわけにはいかないので、発電所は刻一刻と変わる天気の様子を見ながら、火力発電で需要と供給のバランスを調整しているのです。
万が一バランスが崩れたら…それはもちろん大規模停電です!
こちらもまたドイツでの話になりますが、太陽光の電力が予想を大幅に下回り、近隣諸国から電気を輸入することで大規模停電を免れたということがありました。
でも日本は他国と送電網が繋がっていないため、バランスが崩れた場合、大規模停電は避けることができません…。
再エネにはこのような大きな”リスク”があるため、現状では、日本の電源を全て再エネにすることはできないのです。
資源の乏しい日本だからこそ!様々な電源の組み合わせ「エネルギーミックス」が重要に。
2011年の東北大震災のことを考えれば、原子力に抵抗や反対する気持ちがあるのは当然だと思います。
ただ、残念ながら資源小国であることや国情を考えると、日本は1つの電源に大きく頼るということができません。
今大切なのは、安全確保を大前提に、「環境・コスト(電気代)・電力の安定供給」を同時に達成させることです。
例えば、原子力はCO2を排出しないこと、他の発電法に比べ低コストであること、天候や時間に影響を受けない安定供給であることなど、安全面以外においては優れた電源とも言えます。
全ての面で完璧な電源というのは存在しないので、
再エネ・原子力・火力など、各電源をバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」が重要です。
電力自由化に伴って、自分で電力会社を選択できるようになりましたが、
どの会社が何の電源なのか、意識してみるのも良いかもしれません。