電力事情

アメリカは90年代からすでに電力自由化していた!アメリカに学ぶ電力自由化と送電線分離の問題。

2011年3月に発生した東日本大震災での、福島第一原子力発電所の事故に起因して、日本においても「電力自由化」の波が押し寄せています。日本よりも先に、90年代に電力自由化・送電線分離を推進した、アメリカでの問題点や事例を検証し、今後日本でも実際に起きる可能性のある、電力自由化の問題点を考えてみましょう。

・アメリカにおける電力自由化の歴史
1979年に英国ではサッチャー政権による国有企業の民営化推進の一環として、電力事業もその対象となりました。そして、サッチャー首相と同じく西側の先進諸国における、新自由主義の旗手であったアメリカのレーガン大統領の後を継いだ、ブッシュ政権の時代に電力市場の自由化を推進する、「エネルギー政策法」が成立しました。

その後に誕生したクリントン政権の時代でも、引き続き「市場原理」の推進が踏襲され、電力事業における「送電線の開放(オープンアクセス)」が義務付けられ、1996年から2000年頃にかけて、全米24の州とワシントンD.C.において電力の小売自由化が断行されました。

・「大停電などが多発」!アメリカで発生した電力自由化の負の影響と問題点
アメリカのカリフォルニア州では、1996年より電力自由化を開始し、1998年には小売の自由化も行われました。具体的には、発電会社と電力の販売(小売)会社の分離を推進し、大手電力会社には電力の卸売市場からの電力調達が義務付けられていました。

その後、カリフォルニア州で2000年の夏からその翌年にかけて、天然ガス価格の上昇や、ITブームによる電力需要の拡大、猛暑の影響などが重なり、電力の供給が逼迫して大規模な停電が発生し、電力自由化による負の影響や問題点が露わになります。

その際、発電事業者が天然ガス価格の上昇による原材料価格を小売価格に転嫁し、小売事業者の経営が悪化しました。発電事業者は利益を優先し、小売価格への転嫁以外にも、電力供給の抑制を行った他、さらにはモラルに反した価格引き上げを行う事業者もあり、全米的な社会問題にも発展しました。

その他にもアメリカでは、2003年に北米大停電が発生するなど、電力の自由化に伴う弊害が顕著となります。大停電の主な原因は、電力の自由化により、電力供給の質が低下したことがその大きな原因だと言われており、それ以降のアメリカにおける電力自由化の動きは、停滞しているのが現状です。

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